「この家、まだ完成していませんよね…」。エアコンを取り付けに来た業者さんがもらしたその一言こそ、正解。
　ＯＳＢ合板を全面に張った室内はともすれば工事途中のよう。だけど、暮らしながら自分たちでカスタマイズできるようあえて余白の部分を設けた〈住んで育む、未完成の家〉こそが、Ｃさん夫妻と旺建の設計デザイナー関さんが導き出したコンセプト。ここには遊び心に満ちたおおらかな暮らしが広がっていました。
　「アウトドアが好きな自分にとっては、毎日キャンプをしているような気分です」と言うご主人。まばゆい緑を望む窓を開け放つと、隣接する池から届く爽やかな風。空を見上げるような感覚になる５．５ｍの吹き抜け空間や内と外をゆるやかにつなぐ土間など、肩の力を抜いて自由な時間が過ごせる空間は思わず深呼吸したくなる心地よさ。さらに細かな所にフォーカスしていくと、階段下を利用した収納をはじめ、キッチンや玄関などの家具は関さんのアイデアですべて造作。階段の手すりやテーブル、スイッチカバーなどに使ったアイアンは鉄工所にオーダーした特注品というこだわりも。
　「少々雑多でも“ラフ”という言葉で懐深く受け止めてくれる家。自分たち好みの空間を作り上げてくれた関さんに感謝です」と語るご夫妻。吹き抜けにそびえるＯＳＢの壁を眺めながら「ハンモックチェアをつけるのもいいし、壁一面に山の写真を飾るのもいい。グレーチング棚の設置もありかも」と、話す姿は本当に楽しそう。
　理想を追求していく一般の注文住宅に対して、フォーマットを定めないことで暮らしを自在に満喫するＣさん一家。住人が自分らしく、素のままで生きる暮らしとはかくあるべし。真に自由な家づくりは現在も進行中です。